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オフィシャルレポートOfficial Report

12月21日(土) オフィシャルレポート

映画『ありきたりな言葉じゃなくて』の公開を記念して12月21日(土)に新宿シネマカリテで舞台挨拶が行われ、主演の前原滉をはじめ、小西桜子、内田慈、渡邉崇監督が登壇した。

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映画を観終えたばかりの観客の温かい拍手に迎えられて登壇したキャスト陣と渡邉監督。前日の12月20日(金)に公開を迎えたが、前原さんは「撮影していたのが去年で、年齢を感じさせる言葉ですが(苦笑)、『一年って早いな』と思いました。遠いような近いような不思議な感覚です」と心境を語る。

小西さんは「こうやって公開して、みなさんに劇場に足を運んでいただいて、満席の客席を見られるのが1年前を思い返すとすごくありがたいことですし、当たり前じゃないなって思います。ありがとうございます」と満面の笑みで語った。
本作はテレビ朝日のグループ会社として65年の歴史を持ち、報道情報番組やバラエティ番組を数多く手掛けてきたテレビ朝日映像が初めて制作したオリジナル長編映画となるが、内田さんは「チャレンジな企画に一緒にチャレンジ一緒にさせていただきました。こうやってみなさんに観ていただける今日という日が幸せです」とうなずく。

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ちょうど1年前の今ぐらいの時期は、撮影も終盤を迎えた頃で、渡邉監督は「中華料理屋のシーンを撮っていたくらいですかね」と懐かしそうに振り返りつつ「(初日の)12月20日を目標にやってきて、(公開を迎えて)すごくホッとするのかなと思ったら、意外とまた欲が出てきて、ここからスタートで、どこまでたくさんの人に観ていただけるか? 一人でも多くの人に観てほしいという新しい気持ちで今日を迎えられて嬉しいです」とここからの作品の広がりへの期待を口にした。

最初に本作のオファーが届いた際の印象や気持ちを尋ねると、前原さんは「僕は実は、最初は(オファーを)お断りしていまして。当時、“主演”というものへの考え方、作品との関わり方に関して、『作品を背負う』ということが自分の中でうまくバランスが取れなくて、その状態でお受けすると失礼な気がして、引っかかってしまっているので、マネージャーさんにも『お断りしませんか?』という話をしていたんです」と意外な告白。「その結果、渡邉さんやプロデューサーさんが、熱意をもってお話しをしに来てくださって『一緒にやりたいんです』と言ってくださり、その熱意に後押しされる形で『わかりました。じゃあ、やります』というのが始まりでした」と振り返る。

さらに前原さんは「のちのち知った話ですが、渡邉さんは、僕と小西さんの写真を目の前に置いて脚本を書いていたらしくて…。後で聞いて『ちょっと怖いかも…』って思ったんですけど(笑)、それくらいの熱意をもって書いてくださったということなので」と監督の熱い思いに背中を押されたと明かす。

渡邉監督は「拓也は前原くんのイメージで頭にこびりついていて、早い段階でお願いしたいと思っていました。イメージがあったほうが書きやすいので、2人が並んだ状態で、写真と会話しながら書いてました」と明かしたが、前原さんは「この穏やかな感じが怖いですよね(笑)」と語り、会場は笑いに包まれる。

小西さんも、写真まで置いての“あてがき”に「ありがたいです」と語っていたが、渡邉監督は「本当に思ってます? ちょっと引かれてますか…?」と苦笑交じりに語り、会場は再び笑いに包まれていた。

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撮影での思い出深いシーンや印象に残っているエピソードを尋ねると、前原さんは、タクシーが走っているカットに言及し「(タクシーの屋根の)上のランプが手作りなんです」と明かす。「なぜかというと、あれが映画の一番最後の撮影のカットだったんですけど、道中でランプを道に落として、なくしてしまったんですね。深夜でしたが、1時間くらい待ちの時間があって『これは何の時間なんだ?』と思っていたら、スタッフさんがコンビニで似たような色のいろんなものを買ってきて、目の前で(ランプを)つくるということをし始めて…。みんなで『これいけるかな?』とか話しながら、疲れて極限で変な状態になっていて…それがあのカットに全部込められています。すごく思い出深いです」と感慨深げに語った。
小西さんは、そのシーンの撮影時には既にクランクアップを迎えていたが、オールアップの瞬間を共有すべく現場で待機していたそう。「『(オールアップに)いたいな』と思って待ってたんですけど、電車がもうなくなるくらいの時間になって『帰ります…』と後ろ髪引かれながら帰ったんですけど…帰ってよかったです(笑)」と述懐。また、物語のカギを握る“りえ”という役について改めて「みなさんと一緒に、渡邉さん、前原さんとりえという役を形作っていったので、いっぱい頼らせてもらいました。内田さんとも脚本をどう思うか? という話をさせていただいたこともあって、本当にみんなで作らせていただきました」と充実した表情を見せた。

内田さんは「この作品に関わる上で、生半可な気持ちで取り組んではいけないテーマだと思いました。拓也とりえの夜に何があったか? (自身が演じた京子が)真偽がわからないまま、でも拓也を信じたくて仕事に復帰させるところは、慎重に演じていかなくてはいけないと思ったし、復帰させた後、(京子は)拓也がレッスンをしているのを見守りたいんじゃないか? という話を監督にして、そういうシーンを入れてもらったりもしました。奥野瑛太さんが、ご自身で衣装を用意されたりして、アイディアを持ち込んでくれて、少しおかしみも持ち込んでくれて、ある意味で救われた部分もありました」とディスカッションを重ね、アイディアを持ち寄りながらシーンを積み重ねていった撮影現場を振り返った。

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舞台挨拶の最後に渡邉監督は「縦割りというより、グラデーションの感覚で、スタッフも協力してみんなで作っていった映画です。難しいテーマだったりするところをみなさんが汲んでくださって、白黒ハッキリしないところも、曖昧な、にじんだような色であっても、それはひとつの正解なんじゃないか? と話し合った末に、みんなで作った大切な作品です。素直な気持ちで作れたものなので、少しでも広がっていくようにご協力をいただけたらと思います」と呼びかける。

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内田さんも「テーマ的にもなかなか言葉にしづらい作品ですが、みなさん中で、なにか種みたいになったら嬉しいです」と語る。

小西さんは「年の瀬の忙しい時に、たくさんの方とお会いできてすごく嬉しかったです。まだまだ公開が始まったばかりなので、たくさん広めていただけたら嬉しいです。ありがとうございました」と感謝を口にし、前原さんも「足を運んでいただいてありがとうございます。みなさんのSNSの感想を見漁りたいと思いますので、ぜひ書いていただけたらと思います。それが結果、映画が広がることになるので、『観たいな』という気持ちが広がっていけばいいなと思います」と語り、温かい拍手の中で舞台挨拶は幕を閉じた。

映画『ありきたりな言葉じゃなくて』は公開中。